Web相談室開設にあたり

外科医 平岩正樹

【 その1 】

 月島サマリア病院の「がんの相談室」には毎週、全国から相談者が訪れる。6年半続けてきて、その相談の数は少しも減らない。それどころかより追い詰められた状況で相談室を訪れるようになった。必死に多くの情報を集めようとしている。自分の病気に最良の治療法は何なのか。それを調べることに労力を惜しむ人などいないのである。

 そうではあっても「自分は、医療とはまったく関係がない」と思っていた人が、ある日突然癌と知って狼狽しないはずがない。あれほど健康には気をつけていたのに。あれほど健康には自信があったのに。何をすればよいのか。第一、自分は何がわからないのかがわからないではないか。

  月島サマリア病院の「がんの相談室」は今までと変わらない(現在はリアル相談室サイトをご参照ください)。
 電話予約(03-3533-8983)でこれからも毎週定期的に開いていく。それでも、新たにWebを使って相談室を開設することになった。これからは「リアル相談室」と「バーチャル相談室」の2本立てになる。「バーチャル相談室」ができるに至った理由はいくつかある。

(1)平成13年9月、NHKテレビの電話相談番組に出演して、改めて「がんの相談」を求める人の多いことが実感された。番組の視聴率は過去最高のものになったという。特に、癌治療についての基本的な事項を確認したい要望が多かった。

(2)私の極めて個人的な経験の話で恐縮だが、今年、5年間使ってきたパソコンのマザーボードが一部壊れ、続いてWindows95が壊れてしまった。パソコンを買い替え、Windows2000に移り、データや環境を移植することに苦労した。それでも私は、このサイトを管理運営している(株)イーの社長に電話でいろいろ訊ねることができ、ずいぶん救われた。癌の患者ならパソコンとは比較にならないほど、もっと深刻でもっと知りたいことがあるに違いない。

(3)月島サマリア病院の相談室には、北海道からも九州からも相談者が訪れてくる。これは大変な時間と労力が必要である。「がんの相談室」を始めた1995年には想像もつかなかったことだが、これだけインターネットが普及してくると、これを利用しない法はない。「リアル相談室」で解決のつくことと「バーチャル相談室」で解決のつくことはきっと違う。

(4)株式会社イーがこの相談室開設にあたり、企画、管理、運営と全面的にボランタリー活動で支援していただけることになった。医者個人の力では、とてもこのようなものは営めない。深く感謝をします。

 この相談室は個々の相談も然ることながら、相談の履歴がフルに活用できるようにしたいと思っています。ちょうどNHKのテレビ相談番組のような形になればと思います。相談が多い場合は、履歴の中の相談と重複しないものからお答えするようにします。

【 その2 】

 1995年5月、静岡のある病院で私は「がんの相談室」を開いた。日本にたくさんの医者がいるのに、こんなことをする資格が私にあるのだろうかという自戒の念が無かったわけではない。それほど厚顔な医者であるつもりはない。そんなためらいよりも、「無いよりはマシ」という思いが私を突き動かしてきた。

 1999年9月に「がんの相談室」を有料化したときも、「癌の相談室」を続ける上で、他にどのような代案があるのか、という思いで突き進んできた。2001年9月、NHK衛星放送の生番組で「相談」を行ったときも、NHKの人に「他に適当な医者がいない」という言葉に動かされて出演した。

 しかし2001年12月に(株)イーの御厚意で「Web相談」を開いて、2002年11月までにインターネット上で公開している相談回答件数が700件を越えると、「無いよりはマシ」であっても、その質を向上しなければならないという責任を感じるようになった。私一人の回答では、とてもベストで充分な回答をしているとは言えない。癌治療で日本を代表する人々を回答者にこのホームページに迎えたい、という気持ちを抑えることができなくなった。

 今後私が回答者としてお願いする人は、「世間の評判」で選んだ人々ではない。いずれも私が医者を続けてきて、臨床の中で「この人こそ」と信頼している人々だ。参加してくださる回答者の御厚意に深く感謝します。

 週刊現代で『読む抗がん剤』の連載が始まったのは2002年2月のことである。連載である以上同じ事は何度も書けないし、そうかと言って癌を語る上で原稿が次々に消えていくことも不便である。「拡張・読む抗がん剤」のページを新たに創設することになった次第である。

 「拡張・読む抗がん剤」を有料化したことに深い意味はない。このホームページは国やどこかの病院の援助で行われているものではない。ひとえに(株)イーの御厚意にすがってきている。少しでも長くこのホームページの企画が続くことを願って、運営が行われやすくするようにとの思いからである。有料化の代わりと言えるかどうかはわからないが、『読む抗がん剤』の内容に対する読者の御質問に答えて、これも掲載することとした。出版物とは違う、双方向の情報伝達としてのインターネットの可能性を追求したいとの思いからである。多くの人が利用されることを念願します。

 

 2010年〜 (株)ファーストが運営を引き継ぎました。

 


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